株式会社AKISIA

ファイバーレーザー加工機の選び方:26kW高出力機が向く工場の条件

設備投資・機械選定
2026/04/20

「厚板の切断速度が遅くて納期が間に合わない」「中厚板の加工品質にばらつきが出る」

そんな課題を毎日抱えながら、設備投資のタイミングをどうすべきか迷っていませんか?

アマダが国内最大出力となる26kWのファイバーレーザー加工機「TEGRUS 3015-AJ/e」の正式受注を開始しました。建設機械・農業機械メーカーを中心に、中厚板〜厚板の高速・高精度加工へのニーズが急速に高まる中、この新機種は板金工場の設備選定に新たな選択肢を加えるものです。

この記事では、アマダの新機種が持つ技術的特徴を整理しながら、「自社にとって本当に必要な設備とは何か」を判断するための視点をお伝えします。

26kWレーザーとは何か:技術的な特徴を整理する

ファイバーレーザーとは

ファイバーレーザーとは、光ファイバーを媒体として使うレーザー発振方式のことです。CO₂レーザーと比べてエネルギー変換効率が高く、ランニングコストの低減と高速加工の両立が可能な点が特徴です。近年の板金加工業界では、主流の発振方式として急速に普及しています。

アマダの新機種「TEGRUS 3015-AJ/e」は、ハイエンドモデル「IUS-AJ/e型」に搭載された発振器(レーザー光を生み出す装置)が最大出力26kWに達します。従来の一般的なファイバーレーザー加工機(6〜15kW帯)と比較すると、出力の大幅な向上が実現されています。

ビームを2本に分けて使う「高輝度モジュール」

注目すべきは「高輝度モジュール」と呼ばれる独自技術です。これは発振器から出るビームを2本に分割することで、単一ビームのまま高出力にするよりもエネルギー密度を高く保てる仕組みです。

この技術により、材質・板厚に応じてビーム形状を自在にコントロールすることが可能になります。たとえば中厚板では高速切断を優先し、厚板では切断面品質を重視するモード、という使い分けが1台の機械でできるようになりました。

対応できる加工領域の広さ

新機種では最大2×58尺(約600mm×1,740mm)の機種を追加し、長尺材の加工にも対応しています。また、中厚軟鋼板の無酸化切断(酸素を使わずに切断することで、後工程の塗装品質が向上する加工方法)においても大幅な改善が図られています。

溶接後の塗装品質向上、板厚の拡大、長尺対応——これらが組み合わさることで、これまで複数の機械や外注に頼っていた加工を1台に集約できる可能性があります。

どんな工場にとって検討価値があるか

中厚〜厚板を扱う加工量が多い工場

建設機械・農業機械・産業設備など、9mm〜25mm程度の鋼板を日常的に加工している工場にとって、切断速度と品質の両立は常に課題です。従来機では出力が足りず、パス数(切断回数)を増やすか、加工速度を落として対応していたケースも少なくありません。

26kW帯の高出力機であれば、これらの課題に対してより直接的なアプローチができます。

多品種少量で段取りの頻度が高い工場

「今日は薄板、明日は厚板」という段取り替えが多い工場では、加工条件の切り替えに時間がかかることが生産性の足かせになります。ビーム形状を材質・板厚に応じて自動で変えられる機能は、段取り時間の短縮にも貢献する可能性があります。

溶接後工程で品質クレームが発生している工場

切断面の品質が悪いと、溶接時のギャップ(隙間)が広がり、ビード(溶接跡)が不均一になります。これが溶接後の研磨工程の増加や、塗装不良につながることもあります。切断品質の向上は、後工程全体のコストにも影響することを忘れてはなりません。

設備投資判断で見落としやすいポイント

出力の大きさだけで判断しない

「高出力=高性能」と考えるのは早計です。26kWの出力を生かすためには、自社の加工品種・板厚・ロット数・稼働時間が、その機械の能力を引き出せる水準にある必要があります。

仮に現状の加工ワークが薄板中心であれば、12kW帯の機種でも十分なケースがほとんどです。過剰スペックの設備投資は、回収期間を長引かせるだけでなく、維持費の負担を増大させます。

導入後の「オペレーション変化」まで想定する

高出力機を導入すると、加工速度が上がる一方で、搬入・搬出・次工程への移送のスピードも問われます。「機械は速くなったが、人手が追いつかない」という状況に陥らないよう、前後工程も含めた工場全体のフロー(材料の流れ)を事前に見直すことが重要です。

メーカーの展示会・ユーザー見学会を積極的に活用する

工作機械メーカーは定期的に展示会やユーザー見学会を開催しています。こうした機会を積極的に活用することをおすすめします。カタログスペックだけでは判断できない「実際の加工サンプル」や「加工音・切断面の仕上がり」を自分の目と耳で確認できる貴重な場です。

また、同業他社のユーザーと情報交換できることも、展示会・見学会ならではのメリットです。「実際に使ってみてどうか」というリアルな声は、カタログや営業担当者からは得られない情報です。主要メーカーのWebサイトやDMで最新の開催情報をこまめに確認しておくとよいでしょう。

まとめ

今回のアマダ26kW高出力ファイバーレーザー加工機の発表は、板金加工業界における設備の「高出力化」という大きなトレンドを象徴するものです。以下に要点を整理します。

  • 高輝度モジュールによるビーム制御技術が、材質・板厚に応じた柔軟な加工を可能にする
  • 中厚〜厚板の高速・高品質加工に課題を持つ工場にとって、検討価値の高い機種
  • 設備投資判断は「出力スペック」だけでなく、自社の加工品種・工場フロー・回収計画とセットで行う
  • 展示会・ユーザー見学会で実機を確認してから判断することが失敗を防ぐ

設備投資は、一度決断すると数年〜十数年にわたって工場経営に影響を及ぼす重大な経営判断です。「今の課題を解決する機械」と「5年後の受注に応えられる機械」の両面から検討することが、失敗しない設備選定につながります。

設備投資の判断について、「自社の状況に当てはめてどう考えればいいかわからない」とお感じでしたら、ぜひ一度AKISIAにご相談ください。板金加工に特化した経営コンサルティングの立場から、設備投資計画の整理・回収シミュレーションのご支援が可能です。

👉 お問い合わせはこちら

著者プロフィール

山田 昭四郎
山田 昭四郎代表取締役
板金加工専門の経営コンサルタント
株式会社AKISIA代表。メーカー工場長として長年培った加工現場の経験を活かし、経営者と同じ目線で利益最大化を支援。5S・DX・設備投資・人材育成の最適解を導く「現場改善のナビゲーター」として伴走します。愛知から製造業の未来を一歩ずつ。
現場リーダーが育つ工場の育成ステップと評価法