「段取りに時間がかかりすぎて、機械が止まる時間が減らない」「ベテランがいないと段取りが進まない」――そんな悩みを抱える経営者・工場長・生産管理担当の方は少なくありません。
段取り時間の長さは、生産性低下・残業増加・コスト増の三重苦を引き起こします。しかし、正しいポイントを押さえることで、段取り時間を現状の半分以下に短縮した工場も実在します。
この記事では、段取り時間の短縮に取り組む際に「最初に見るべき3つのポイント」を、現場の具体例とともに解説します。今日から動き出せる実践的な内容をお届けします。
段取りとは何か
「段取り」とは、機械や作業ラインを次の製品・工程に対応させるための準備作業のことです。金型の交換、治具(じぐ:加工物を固定・位置決めする道具)のセット、プログラムの入力、材料の準備などが含まれます。
板金工場では、ベンダー(曲げ加工機)やレーザー加工機の段取りが生産全体に大きな影響を与えます。1回の段取りに30分かかるラインと10分で終わるラインでは、1日の稼働時間に数時間の差が生まれることもあります。
段取りには「内段取り」と「外段取り」の2種類があります。内段取りとは機械を止めた状態でしか行えない作業、外段取りとは機械を動かしながら並行して行える準備作業のことです。この2つを区別するだけで、改善の方向性が大きく変わります。
短縮のための3つのポイント
ポイント① 内段取りと外段取りを分ける
まず着手すべきは、現在の段取り作業を「内段取り」と「外段取り」に分類することです。多くの現場では、外段取りで事前にできる準備(金型の準備、プログラムの確認、材料の手配)を、機械を止めてから行っているケースが見受けられます。
改善の第一歩は「観察」です。段取りの手順を動画に撮影し、どの作業が機械停止中にしか行えないかを洗い出してください。そのうえで、外段取りに移行できる作業を一つひとつ前出しすることで、機械停止時間を劇的に短縮できます。
ある中部地方の板金工場では、この分類だけで段取り時間を約40%削減した事例があります。特別な設備投資は不要で、やり方を変えるだけで実現できます。
ポイント② 金型・治具の置き場と検索時間をゼロにする
段取り時間の「見えないロス」として多いのが、金型や治具を探す時間です。「どこにしまったか分からない」「同じような金型が複数あって判断に迷う」という声は現場でよく聞かれます。
金型には必ず識別番号をつけ、使用プログラムとひも付けた管理台帳(紙でも電子でも可)を整備しましょう。保管場所は機械の近くに集約し、取り出しやすい高さ・順番で配置することが重要です。
さらに、ベンダーであれば使用頻度の高い金型を機械の正面付近に置くだけで「歩数」が大きく減ります。歩数を減らすことは、時間短縮と作業者の疲労軽減に直結します。
ポイント③ 段取り手順の標準化とチェックシートの導入
段取りの速さが「ベテランの勘」に依存している工場は、属人化のリスクを抱えています。ベテランが休んだ途端に段取り時間が倍以上かかる、というケースは珍しくありません。
手順を標準化するには、まず最も段取りの早い作業者に密着して手順を記録し、チェックシートに落とし込むことから始めます。手順の「順番」「使う道具」「確認項目」の3点が明確になるだけで、誰が段取りをしても一定の時間に収まるようになります。
チェックシートは最初から完璧を目指す必要はありません。現場で使いながら改善を重ねる「育てるシート」という発想が定着を促します。
具体的な改善手順
段取り短縮を進める際は、以下の順番で取り組むことをおすすめします。
Step1:現状の計測
現在の段取り時間を工程ごとに計測し、「どの作業に何分かかっているか」を数字で把握します。勘ではなく、データで動くことが改善の出発点です。
Step2:内・外段取りの仕分け
計測した作業を「機械を止めないとできない作業(内段取り)」と「事前にできる作業(外段取り)」に分類します。可能な限り外段取りに移行することで、機械停止時間を最小化します。
Step3:置き場・識別の整備
金型・治具・工具の保管場所を整理し、識別ラベルや管理台帳を整備します。5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の基本に立ち返ることが、段取り短縮の地盤固めになります。
Step4:標準手順の作成と教育
改善後の段取り手順をチェックシート化し、現場全員に共有します。新入社員でも一定水準で段取りできる状態を目指します。
Step5:継続的な改善(PDCA)
改善後も定期的に時間を計測し、さらなる短縮余地がないか確認します。段取り改善は「一度やったら終わり」ではなく、継続的な取り組みです。
まとめ
段取り時間の短縮は、設備投資なしでも実現できる生産性改善の代表的なアプローチです。本記事のポイントを改めて整理します。
- ポイント①:内段取りと外段取りを分け、外段取りを最大化する
- ポイント②:金型・治具の置き場を整備し、「探す時間」をゼロにする
- ポイント③:段取り手順を標準化し、チェックシートで属人化を防ぐ
この3点に集中して取り組むことで、多くの工場では段取り時間を30〜50%削減できています。まずは1工程だけ取り上げ、現状の計測から始めてみてください。「小さな成功体験」が現場を動かす原動力になります。
段取り改善・生産性向上の取り組みにお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。AKISIAでは、板金工場に特化したコンサルティングを通じて、現場に合った改善をご支援しています。
著者プロフィール

- 代表取締役
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板金加工専門の経営コンサルタント
株式会社AKISIA代表。メーカー工場長として長年培った加工現場の経験を活かし、経営者と同じ目線で利益最大化を支援。5S・DX・設備投資・人材育成の最適解を導く「現場改善のナビゲーター」として伴走します。愛知から製造業の未来を一歩ずつ。
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