板金加工の現場で、汚い工場が儲かっているのを私は一度も見たことがありません。綺麗な工場でも簡単には儲けられない今の時代、最低限「汚くない工場」を作ることが、製造業経営の出発点だと確信しています。AKISIAが実際に取り組んだ5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとった職場改善活動)改善の事例をご紹介します。
白線をまたぎ、汚さに慣れてしまった板金加工の現場
その工場に初めて足を踏み入れたとき、通路には白線が引かれていました。しかし誰も気にしていない。製品、部品、工具が白線をまたいで無造作に散乱し、まさに「昔ながらの町工場」という光景でした。
現場では以下の問題が起きていました。
- 工具や材料がどこにあるかわからず、作業のたびに探す時間が発生していた
- 段取りに必要以上の時間がかかり、生産効率が慢性的に低下していた
- 作業者は「これが普通」と思い込み、汚さに完全に慣れきっていた
- 課長・工場長も同じ感覚に染まり、改善への意識が薄れていた
誰も悪意を持っているわけではない。ただ、「こんなものだ」という空気が工場全体を覆っていました。これは板金加工の現場でよく見られる、経営改善の前に立ちはだかる最初の壁です。
工場全体ではなく「1.5メートル以内」から始める整頓の哲学
私がこの現場で最初に伝えたのは、「5Sを工場全体でいっぺんにやろうとしない」ということでした。大きく始めると、現場はついてきません。スモールステップから始め、確実に実績を積み上げる。それが私のやり方です。
5Sの中で私が最初に取り組むのは、必ず「整頓」です。整理・整頓・清掃・清潔・しつけの順番ではなく、まず「どこに何を置くか」を決める「定位置化(ものの置き場所をあらかじめ決め、常にそこに戻す管理方法)」から始めます。定位置を決めれば、そこに収まらないものは捨てるか移動するしかない。自然と整理が進むのです。
具体的な指導内容はこうです。
- 範囲を極限まで絞る:作業範囲1.5メートル以内・工具箱の引き出し一つのみを対象にする
- 定位置化を徹底:「ここにあるべきもの」を作業者自身に決めさせ、その場所に戻す習慣をつける
- 2週間に1回の訪問:「山田さんが来る」という目標を作業者に持たせる
- 毎回必ず確認・承認:小さな改善を見逃さず、その場で評価する
「工場全体の5S」ではなく「引き出し一つの整頓」から始める。この現場改革のアプローチが、板金加工の現場を動かす鍵でした。
3回目の訪問から現場が変わり、工場が「営業ツール」になった
変化は早かった。私の3回目の訪問あたりから、作業者自身が「段取りの時間が明らかに短くなった」と口にするようになりました。
- 作業・段取り時間の短縮:作業者が体感できるレベルで改善が進んだ
- 自発的な改善の加速:成果を実感した社員が「もっとやろう」と自ら動き始めた
- 社長が現場を褒めるようになった:小さな変化に気づいた社長が現場に出て声をかけた
- 良いスパイラルの誕生:褒められた社員がさらにやる気になり、改善が自走し始めた
そして最大の成果は、数字ではありませんでした。この工場は今、次のステップとして「お客様を工場に招く」という取り組みに入っています。工場が営業する、ということです。特定のお客様に売上が偏っていた状態から、工場見学をきっかけに新規のお客様が増え、売上の分散にもつながっています。社長は「工場がこんなふうに変わるとは思わなかった」と、非常に喜んでいます。
まとめ:5Sの本質は「汚くない工場」を作ること。板金加工業の経営改善はここから始まる
この事例で私が伝えたいことはシンプルです。
汚い工場で儲かっている会社は見たことがない。
綺麗な工場でも簡単には儲けられない今の時代、最低限「汚くない工場」を作ることが製造業経営の土台です。そして板金加工の現場において、5Sは大きく始める必要はない。引き出し一つ、1.5メートル以内の作業範囲から始めれば十分です。
小さな整頓が習慣になり、社員が自信を持ち、社長が褒め、さらに改善が加速する。その先に「見せられる工場」が生まれ、工場そのものが営業ツールになる。当たり前のことを、小さく、確実に、徹底する。それが経営改善の王道だと、この現場が改めて教えてくれました。
板金加工の現場改善や経営改善についてお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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